最高裁判所第二小法廷 平成元年(あ)710号 判決 1992年6月15日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人中北龍太郎、同佐伯千仭、同浅野博史、同中道武美の上告趣意第二点及び同第三点のうち、憲法二一条違反をいう点は、軽犯罪法一条三三号前段、大阪府屋外広告物条例(昭和二四年大阪府条例第七九号。平成四年同条例第三号による改正前のもの)二条二項四号、一七条一号の各規定が憲法二一条に違反しないこと及び右各規定を本件に適用しても憲法二一条に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和四一年(あ)第五三六号同四三年一二月一八日大法廷判決・刑集二二巻一三号一五四九頁、同四二年(あ)第一六二六号同四五年六月一七日大法廷判決・刑集二四巻六号二八〇頁)の趣旨に徴して明らかであるから、所論は理由がなく、憲法三一条違反をいう点は、軽犯罪法一条三三号前段は犯罪の構成要件が不明確とは認められないから所論は前提を欠き(前掲最高裁昭和四五年六月一七日大法廷判決参照)、その余の上告趣意は、違憲をいう点を含め、実質はすべて単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
所論にかんがみ職権で判断すると、平成元年政令第二七号大赦令一条は、軽犯罪法違反の罪を犯した者は赦免すると定め、同二条は、「前条に掲げる罪に当たる行為が、同時に他の罪名に触れるとき、又は他の罪名に触れる行為の手段若しくは結果であるときは、赦免をしない。」と定めているところ、被告人が本件電柱にみだりにはり札をした行為は、本件信号機柱及び道路案内標識柱にみだりにはり札をした行為と包括的に一個の軽犯罪法違反の罪を構成するものであるが、右のうち信号機柱及び道路案内標識柱にはり札をした行為は、同時に、禁止された物件に広告物を表示したものとして大阪府屋外広告物条例違反の罪にも該当し、右政令二条により赦免されないことになるのであるから、右赦免されない行為と包括的に一個の軽犯罪法違反の罪を構成する本件電柱にみだりにはり札をした行為についても赦免されないと解するのが相当である。
よって、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官藤島昭 裁判官中島敏次郎 裁判官木崎良平 裁判官大西勝也)